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これであなたも麦博士

古くは縄文時代から栽培され、わたしたち日本人の食生活とは米と同じく長いつきあいのある大麦。
穂の数からニ条種と六条種に分かれ、ニ条種はビールなどの醸造用原料に、六条種は米と混ぜて炊飯する麦ごはん用の精麦に加工されるほか、 味噌やみりんの原料として使われます。
富山で栽培されている大麦は、 精麦となる六条種が主流です。

戸出産の小麦は、学校給食で大活躍!

 地場産のうどんを作ってほしい。その要望に応えるために、平成14年秋から戸出で小麦栽培が始まりました。当初心配されていた収穫時の問題はなく、品質も良く、17年度産ではすべて1等に格付けされました。そして、18年度からは県下の学校給食で副食のうどんの原料として使用されています。18年度の生産量は12,600kgで、そのうちの5割弱が学校給食に使われており、残りはパン、乾麺、せんべい、小麦粉として販売されています。これからはパンの販売が本格的に始まる予定。現在、主力品種のキヌヒメは中力粉であり、パンづくりに最適なものではないため、もうひとつの品種である強力粉のユキチカラの生産拡大を目指しています。一方、小麦栽培のきっかけとなったうどんの製造は、手延べの乾麺で「といでうどん」として、生協や学校給食、JA直売所などで販売されています。
うどん(2人前)350円、小麦粉(1,000g)280円

麦茶は、高血圧&夏バテ知らず。

 血圧の上昇には、体内のカリウムとナトリウムのバランスが深く関係しています。通常、食塩という形で摂取しているナトリウムは、過剰にとり過ぎると高血圧を招く恐れがありますが、その一方で大麦に多く含まれるカリウムは増え過ぎたナトリウムを体外に排出したり、血圧を下げる働きをします。また、筋肉の活動を正常に保つ働きもあるため、カリウムが不足すると筋肉の収縮がスムーズに行われなくなり、だるさなどを引き起こします。つまり、カリウム不足は夏バテの原因の1つでもあるのです。しかも、発汗と一緒に失われしまうため、これからの季節は大麦を原料とする麦茶を飲むのがおすすめ。ほとんどの方はカリウムが不足気味なので、十分な補給を心がけたいものですね。

栄養満点だから、学校給食にも登場!

 富山県は、六条大麦の全国有数の生産地です。今、県内で栽培されている六条大麦の品種はすべて「ファイバースノウ」であり、平成14年度に「ミノリムギ」から切り替わって以来、本格的に生産されています。また、その六条大麦を使った麦焼酎も開発され、白麹仕込みの「ファイバースノウ」と黒麹仕込みの「ゴッドファーザー」の2タイプが発売されています。このように今、注目を集めている大麦は、栄養価の高い健康食として評価されている食材。県内ほぼ全域の学校でも、次代を担う子どもたちの健康をサポートするため、炊き込みごはんやピラフなどの材料として、学校給食に積極的に取り入れられています。また、高岡市戸出では地元産の小麦を給食のうどんの一部に使用していく予定もあります。

懐しい麦のおやつは古来の伝統食。

 今はあまり見かけなくなりましたが、昔はよく大麦を炒って粉にしたものを、おやつとしていただいたものでした。 関東では「麦こがし」、関西では「はったいこ」、関東以北では「香煎」などと呼び方を変えて、各地で庶民の味として親しまれていたようです。富山では「いこ」と呼ばれ、これは「炒り粉」が転じた呼び名のようです。
 大麦の炒り粉は、世界的にみてももっとも古い大麦の調理法の一つといわれています。 日本についてみると、平安初期に編纂された日本最初の百科事典『和妙類衆聚抄』に「米麦を乾かし、これを炒って粉にし、湯水に転じて服す。これを『みずのこ』あるいは『はったい』という」と記されています。おそらく、これが日本で麦の炒り粉について記した最古の記述ではないかといわれ、「麦こがし」「はったいこ」そして「いこ」には、なんと1000年以上もの歴史があることがわかります。

庶民の主食から健康食品へ。

 世界的に見れば1万年以上も前から栽培されている穀物、麦。原産地は西アジアから中央アジアの乾燥地帯です。日本には3~4世紀頃、中国・朝鮮を経て大陸から渡来したといわれています。庶民の主食として普及する一方で、健康に良い食物として親しまれ、江戸幕府を開いた徳川家康も麦ごはんを好んで食べていたことは有名です。
 戦後、暮らしが豊かになるにつれ、麦ごはんは姿を消していきましたが、近年ふたたび麦のもつ栄養や機能が注目を集め、麦ごはんは「健康食品」として食卓に上るようになりました。

期待の新人「ファイバースノウ」登場。

 富山県では平成12年まで「ミノリムギ」が奨励品種として栽培されてきました。 ミノリムギは色白で麦の特徴である黒い筋=黒条線が目立たないことから、加工業者に好評の品種です。しかし、ミノリムギは規格外品ができやすく生産効率が良くないことから、生産サイドからはより収量のある品種が求められていました。
 そこで登場したのが「ファイバースノウ」です。ファイバースノウは大粒で収量が安定しており、しかも精麦するとミノリムギよりも色白で、加工のしやすさにも優れています。 平成9年度からの試験期間を終え、この秋から本格的な導入・生産を開始。来年からは富山県各地で、新品種・ファイバースノウが収穫されるようになります。

精麦いろいろ。

 麦ご飯用に麦を加工することを「精麦」といいます。もっとも一般的な精麦の方法は、押し麦、白麦、米粒麦です。
 押麦とは、精白した大麦を押しつぶしたものです。真ん中に黒いすじ(黒条線)があるのが特徴です。よく「麦とろ」に使われるのは、この押麦です。
 白麦とは、原料麦を黒条線で二つに割り、押しつぶしたもの。麦飯の外観・舌触りが米飯に似ています。
 米粒麦は押しつぶさない白麦。お米とそっくりに加工されているので、食べやすく、またお米と比重がほぼ同じなので、ご飯を炊く時に麦が浮き上がりません。
 最近ではビタミンをプラスした精麦や胚芽つきの精麦も登場、健康食品としての注目度がますます高まっています。

麦ごはんが黒くなるのはなぜ?

 麦ごはんを炊いたことのある方なら、炊き上がった麦ごはんがしばらくすると黒っぽくなっているのをご覧になったのではないでしょうか。
 これは大麦にポリフェノールという色素を含む物質が含まれているため。ご飯を炊くことで、ポリフェノールが酸化し、色が黒っぽく変るのです。
 ポリフェノールはがんや動脈硬化、糖尿病などの病気を引き起こす原因となる活性化酵素を抑える働きをする抗酸化物質。赤ワインやチョコレートに多く含まれていることで有名になりましたが、麦芽から作られるビールにも、このポリフェノールは多く含まれています。
 もっとも、白いご飯に慣れた方には、黒っぽいごはんは少し抵抗があるかもしれません。
 そこで現在では、ポリフェノールの含有量を抑えた大麦の開発も進められています。

麦ごはんはハイレベルな繊維食品。

 精白米と比べて、約10倍もの食物繊維を含む大麦。栄養も豊富で、カルシウムなら4倍、鉄分、ビタミンB1なども白米を上回る含有量を誇ります。
食 物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2つの種類があり、水溶性食物繊維はコレステロールを抑える働きが、不溶性食物繊維には便通を良くする働きがあります。麦にはこの2つの繊維がバランス良く含まれているのです。
 この麦パワーを毎日気軽に取り入れるなら、なんといっても「麦ごはん」。お米に混ぜて炊きあげるだけで、一食あたりの食物繊維量がぐんとアップ。便秘に悩む方はもちろん、糖尿病や肥満防止に、不足しがちなカルシウム摂取に、ぜひおすすめの一品です。

富山の麦は色白美人。

 水田の転作として栽培されることの多い麦。富山で栽培されているのは全国的にも主流の「ミノリムギ」という品種です。富山のミノリムギは質が良く、見た目は白く、麦の特徴である黒い筋「黒条線」が目立たないため、主に主食用として使われています。主食としては、かつては当たり前に食べられていましたが、今では健康食として注目される「麦ごはん」。麦は米よりも大粒の楕円形をしていますが、主食用のものは、丸い粒状に加工します。これは、白米に混ぜて炊いていも、目立たないようにするため。白米に混ぜても目立たないことが主食用麦の条件ですから、富山の色白で黒条線も控えめな麦は、主食用の需要が高いのです。