農家の数だけあると言われる、わが家の米じまん。
「土がいい」「いや水がいい」「川ひとつ越えても味が違う」と
代々受けついだ田んぼへのこだわりから、最新の技術まで
おいしい富山米の秘密にせまります。
晩生の「てんこもり」に希望がてんこもり
成熟期が「コシヒカリ」より7日程度遅い、晩生品種「てんこもり」が誕生しました。高品質で食味も良く、直播栽培にも適した品種です。富山県がこの品種の育成に取り組んできたのは、中生品種の「コシヒカリ」に作付けが集中していることから、成熟期の異なる早生、中生、晩生のバランスのとれた作付けに改善していく必要があったためです。
平成19年度は100ha程度の栽培実証を行うとともにイベントなどでのPRに努め、平成20年度より本格的な栽培を推進し、食卓にも登場する予定です。
富山のブランド米のひとつとして大きな期待が寄せられている「てんこもり」。この名称は、富山の清らかな水や肥沃な大地、生産者の情熱などを詰め込んだお米を連想させる、最高のおもてなしという意味を表現できるなどの理由から名付けられました。(2007.08.06)
外観品質
てんこもりは、成熟期が遅いため、高温登熟も回避でき、コシヒカリよりも安定して品質が良くなります。
台風通過後の直播きほ場
左側のコシヒカリは倒伏していますが、右側のてんこもりは倒れず、直播き栽培にも敵しています。
待望の新品種、てんたかく
ハナエチゼンとひとめぼれの組み合わせから生まれた新品種「てんたかく」。高温登熟条件でも品質が良好で、食味はハナエチゼンより明らかに美味であり、収量性もハナエチゼン並に高いことから、平成14年度に県下8箇所で実施された現地栽培試験の検査成績では全て1等となりました。その他、コシヒカリより出穂期、成熟期とも12日早い早生という特性も備えています。また、需要者への市場評価でも、外観が良い、砕米の発生が少ない、ご飯の光沢が良いなど、高い評価を得ています。
このため、平成15年度には170haの栽培実証を行い、平成16年度には奨励品種に採用し、本格的な普及ができるよう、計画的に取り組んでいくこととなっています。今は出番をじっと待つ「てんたかく」。この名称は、新米が実る秋に稲穂がそよぐ澄んだ空をイメージさせる、食欲の秋を連想させる、格調高いなどの理由から名付けられました。
コシヒカリに適した気候風土
富山では、8月初旬に穂が出て9月中旬ごろまでに実ります。このおよそ40日間の平均気温は約25度。これはコシヒカリが最もおいしく実る気温です。 また、自然環境の面で見逃せないのが北アルプスの豊かな雪解け水です。
コシヒカリの実る時期は日中の暑さが厳しく、稲も夏バテ気味。放っておくと根の働きが弱くなり、米の味が落ちてしまいます。そこで、北アルプスから流れてきた冷たい水を水田に入れてやると、稲は元気を取り戻し、しっかり熟した米を実らせることができるのです。
日本一おいしい米づくりの研究
おいしいコメ8つの指標
玄米水分 | 目標15.0 |
---|---|
玄米白度 | 目標20確保 |
完全粒歩合 | 目標80%以上 |
屑米重量 | 目標ゼロ |
搗精時間 | 100gの玄米を90%搗精する場合の目標70秒以下 |
砕米重量 | 100gの玄米を90%搗精した場合の目標4g以下 |
精米白度 | 目標40確保 |
精米タンパク 含有量 |
目標5.5% |
※屑米(くずまい):よく実らなかったコメ
※搗精 (とうせい):コメをついて白くすること
おいしさの秘密は自然の気候風土のおかげだけではありません。富山県の農業関係者が「魚沼産に負けない日本一うまい米づくり」に本腰を入れ始めたのは、およそ10年前のことでした。 「うまくなるかどうかはお天気次第という米づくりではだめだ。天候に左右されずに、おいしい米を作る方法を探さなければならない」それが、おいしい米を作るために県農業技術センターが出した結論でした。
そこで「日本一おいしい富山米づくり」への第一歩は、まずおいしい米とはどんな米なのかという基礎研究からスタート。6年間にわたる研究と試行錯誤の結果、おいしい米に必要な8つの指標を導きました。(下表参照) この指標は米のおいしさを科学的、統計的に数値化したもの。平成7年産米から、富山県産コシヒカリが備えるべき最低条件として導入され、農家と農業技術者たちの努力がはじまりました。その年より富山米はみごと食味ランキング「特A」に輝き、現在に至ります。
消費者の期待に応える品質管理
富山県で生産され、出荷されるコシヒカリは年間約13万トン。4万トン程度とみられる魚沼産の3倍以上の量です。一粒一粒の形や味にこだわって作られた米は、基準に合ったものだけが富山県産コシヒカリとして出荷されています。全農とやまでは、米のタンパク含有量 を調べ、色彩選別機や最新式のふるいで完ぺきに品質をそろえています。
味が良くて、手頃な値段。しかも13万トンすべてが高い品質を保っています。これが北海道から沖縄まで全国40都道府県から引き合いがある人気の秘密です。北アルプスの清らかな水と労を惜しまない生産者が育てた「水と人の幸。富山米」。富山のコシヒカリは、農業関係者の血のにじむような努力の結晶なのです。