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稲作歳時記

八十八の手間がかかるから「米」 という漢字になった…
そんな由来は知っていても、実際の作業は知らないという人がほとんどではないでしょうか。
ここではそんなお米の生育の様子を、季節のコラムをまじえてご紹介します。

秋から春

ケイ酸分資材の投入
トラクターによる田おこし

美味しい富山米は元気な土から

 1年間の米づくりが終わると、田んぼの土も人と同じように疲れています。 疲れを癒し、新しい年の美味しい米づくりに向けて元気を取り戻すためにも、不足している栄養分の補給が必要です。
 収穫の秋。刈取りが終わると…
 農家では、田んぼに不足している「ケイ酸分」の補給のため、土づくり資材を投入します。「ケイ酸」は、稲の葉や根の活力を高める働きがあり、気象変動にも強く倒れにくい丈夫な稲を育てます。また、堆肥などの「腐植」(土壌有機物)も田んぼの地力アップにつながります。「腐植」が多い田んぼでは、美味しさがたくさんつまった、見た目もきれな粒揃いのお米がとれるのです。
 そして、雪解け…
 春の訪れとともに、秋に充分な栄養分が投入された田んぼは、再び美味しいお米が育つ舞台となるのです。(2006.02)

けんどん

 富山県内で「けんどん」というと「ふるい」のことを意味します。今でも農家の作業小屋で、梁に掛けてある様子が見られるでしょう。けんどんは、もみや豆類、種などに混ざったゴミなどを振るい取るために使われました。最近ではふるいと呼ばれるほうが一般的なようです。 ちなみに、全国的に使われる「けんどん」とは、ふたや戸のとりはずしが可能な「けんどん箱」を意味するようです。(2006.02)

秋~冬

稲わらは、大事な資源

 今年の米づくりは、全国的に台風による水害など相次ぐ自然災害に見舞われました。しかし、富山県では幸いにして、作況指数が「101」の「平年並み」。10a当たり収量は537kgとなりました。そんな美味しい富山米を支えるのが元気で良質な土づくり。
 そこで活躍するのが、稲を刈り取り、脱穀した後の"稲わら"です。水田を耕す時に稲わらを一緒にすき込むことによって、土に栄養を与えることができるのです。
 また、果樹や野菜を乾燥や陽射しから守るための敷わらや、飼育牛などの粗飼料など、さまざまな形で利用されています。そして、意外や意外、大門町や氷見市など県西部のお祭りで知られる火渡り神事にも使われているのです。
 かつては各家庭のわらぞうりとして、そしてお正月のしめ飾りとして、今も昔も利用されている"稲わら"は、いつの時代の暮らしにも欠かせない、大切な資源なのですね。(2005.11)

にご

 わらの穂先(籾をとった後のもの)のことを「にご」といいます。また、「にいご」や「ぬいご」と発音する地域もあります。今はコンバインで稲刈りが行われるため、わらは短く裁断されてしまい、「にご」を取ることが難しくなってしまいましたが、かつては米俵を編む縄として、小包み用の縄として、ほうきとして日常生活で重宝されていました。(2005.11)

6月中旬~7月中旬

田干し(たぼし)

 6月中旬から7月中旬にかけて行われる「田干し」とは、田んぼを乾かすこと。農家の方々の間では「中干し」ともいわれています。
 気温が上がると、土の中の有機物が一斉に分解し始めるため、根が酸素不足になります。そのため、暑い夏が訪れる前に、田んぼを乾かし、悪いガスを追い出して、根に十分な酸素を送ることが必要。田んぼを乾かすことで、稲の基礎体力がつき、良い実りにつながるのです。乾かし方は、田んぼの表面に少しヒビが入り、歩くとかかとが少し沈む程度まで。乾かす際、田んぼに溝掘りをすることも重要なポイント。こうすることで、田んぼ全体を均一に干すことができ、その後に水を入れた時も均一に行き渡らせることができるのです。
 田干しが終わると、穂が出るころに追加の肥料を与えて成長を促す「穂肥(ほごえ)」の時期に入ります。(2005.06)

みなくち

 田んぼを乾かした後、水を取り入れる口のことを「みなくち」といいます。「み」は「水」、「な」は「の」と同類の古い格助詞、「くち」は「口」という意味。この方言は、富山県だけでなく、東北地方や新潟県、長野県でも用いられています。また、その反義語として、水が出る口を「みなじり」といいます。(2005.06)

3月

育苗作業

 そろそろ育苗作業の季節ですね。近頃は省力・低コストのために種子を直接田んぼにまく、直播栽培が増えていますが、まだまだ苗を育てて田植えを行う移植栽培が主流です。育苗作業の時期は、種子にとって春は名のみで、朝晩はまだ寒く、播種された育苗箱を、ビニールハウスなどで並べて保温しながら育てます。あとは、よく揃った元気な苗になることを祈るだけです。(2005.03)

育苗作業の流れ

1. 比重選

水に硫安を加えて比重液を作り、比重の差で浮き上がる未熟籾を取り除く。

2. 浸種

発芽に必要な水分を吸収させ、出芽の斉一化を図るため、
一定の水温で水を交換しながら一週間、水にひたす。

3. 催芽

一定の温度で芽出しを行う。

4. 床土入れ

育苗箱に適切な量の床土を入れる。

5. 潅水

適切な量の水を入れる。

6. 播種

うるち種では120g/箱のうす播きをする。

7. ふく土

籾がかくれる程度に土をかぶせる。

生育過程

出芽期

緑化期(1葉期)3~4日

硬化期(2葉期)13~18日

完成苗(2.5葉期)

去年より、おいしい米を作りましょう。

 4年連続の米の品質低下をストップさせるには、土づくりが最も重要。そこで、土づくり資材の散布や、牛ふんなどの堆肥が散布できる地域の人々に散布を行うよう呼びかける「春の土づくり緊急運動」を展開しています。
 夏の高温によって米が白く濁ることも、品質低下の原因のひとつ。最も暑い時期を避けるために、田植えや種まきの時期を10日から1週間ほど遅らせることが必要です。また、おいしい米を作るには、丈夫な苗を育てることも大切。苗に水をかけすぎないこと、ハウス内の温度を20~25度に保つよう換気すること、30度以上になると病気が発生しやすいことなどに注意して、元気な苗づくりに努めましょう。(2005.03)