八十八の手間がかかるから「米」 という漢字になった…
そんな由来は知っていても、実際の作業は知らないという人がほとんどではないでしょうか。
ここではそんなお米の生育の様子を、季節のコラムをまじえてご紹介します。
ウシナカス
子供を連れて、富山に里帰りした時のこと。「大事なもん、ウシナカした」と慌てているおばあちゃんを見て、子供が「牛を泣かす? どこに牛がいるの?」と不思議な顔をしていました。そのうち、「あった、あった!」と、笑顔のおばあちゃん。子供に、家の鍵を見せていました。「ウシナカス」とは、「なくする、失う」という意味。子供は、またひとつ富山弁を覚えました。
ショムナイ
私、東京から来て料理教室を開いているのですが、この前、生徒から「先生、ショムナイ」といわれて、「庶務課のことかしら? 会社ではないので、当り前なのでは?」とビックリしたんです。そしたら、他の生徒が「味付けが薄いみたいですよ」とひと言。「ショムナイ」とは、「味付けが薄い」という意味だったのですね。
サイ
この前、親戚のおばあちゃんの家に遊びに行った時のこと。夕食の時に、おばあちゃんが、「ほら、サイ、食べられ」と言って皿を目の前に置くので、「えっ、動物のサイ?」とビックリ。「サイの肉って、食べられるんだっけ?」と考えていたら、「おかずのことよ」とお母さん。「サイ」とは、「おかず」という意味だったんだね。
イロム
この前、彼女をりんごの木の下で撮影したんだけどさ。「いいねぇ、イロンどる、イロンどる」って言ったら、喜んでポーズまでとってたんだけど、「りんごが」って言った途端に怒り出しちゃって。どうしたんだろ? 「イロム」とは、「色づく」という意味。りんごが熟して色づいてきたねぇ、と最初から言えばよかったのでしょう。
オエル
しとしと降る雨の中、隣のおばあちゃんが遊びに来たがだと。みんなでお菓子を食べている時、おばあちゃんが「植物がオエル季節やねぇ」とひと言。家族全員「これから生えてくる時期なのに、終えるって?」と目を丸くしたがだとー。「オエル」とは、「生える」という意味。植物が生える季節だねぇ、と言いたかったのですね。
お父さんの髪もオエルかな?
まま
ある日、町内で花見をすることになったがだと。みんなが花見見物を楽しんでいる中、数人の若者だけがあくせく働いていたそうな。そしたら、おばあちゃんが「はよう、まま食べられんか」とひと言。「お母さんを食べるの?」とビックリしたがだとー。「まま」とは、ご飯のこと。早く、ご飯を食べなさいね、という意味だったのですね。
シト
ある日、町内で餅つき大会があったがだと。若者たちが餅米を蒸しているとき、お年寄りから「シトかけてくだはれ」との声。それを聞いた若者たちは、「えっ、人?」「人をかけるの?」とビックリ。「シト」とは、蒸し上がる少し前にかける少量の水のこと。少量の水をかけてください、という意味だったのですね。
稲株広げる
ある日、ニワジマイ(秋の収穫時に手伝った人々の慰労会)があったがだと。始まってすぐ聞こえてきた「イナカブ広げてくだはれ」という声に、若者たちは「?」。意味が分からんかったがだとー。「イナカブ広げてくだはれ」というのは、アグチ(胡座)をかくという意味の縁起ことば。くつろいでください、という意味だったのですね。
はんごろしのおもてなし
ハンゴロシ【半殺し】:おはぎ、ぼた餅
ある日、農家に遠方から客さんがあったがだと。台所では嫁と姑がもてなし料理の真っ最中。ふと聞こえてきた「~はんごろしにしようか~」の声にびっくりした客はあわてて逃げ帰ったがだとー。おはぎやぼた餅は米粒が少し残った状態で仕上がることから生まれた言葉。他にも、餅とちがって杵の音がしないことから「トナリシラズ」とも呼ばれました。